PBXは日本語で電話交換機と呼ばれ、外線からの電話を内線に接続したり、内線同士の接続をコントロールしたりするなど、おもにオフィスなどで利用されています。
PBXは電話でのやりとりが必須であるコールセンターはもちろん、多くの企業でも導入されているシステムです。
この記事では、PBXの種類やその選び方を解説するため、ぜひ導入の際には参考にしてみてください。
まずPBX(Private Branch eXchange)は、日本語では「電話交換機」という意味です。PBXがどのようなものなのか、その仕組みについて解説します。
PBXとは簡単にいえば、複数の電話回線を1つの電話回線に集約し、発着信などを制御するものです。外線からの電話もいったんPBXに集約し、そこから社内の内線に接続します。
また、内線同士の接続も行なうため、コールセンターのように電話を頻繁に使う企業だけではなく、一般的な企業でもほぼ必須といえるシステムでしょう。これらはあくまでPBXの主要な機能であり、PBXの種類によっても細かな機能の違いがあります。
PBXと似たシステムにビジネスフォンがあります。両者の機能は非常に似ていますが、利用する目的や規模によって使い分けるものです。
まず、PBXはおもに大規模な事業者向けであり、ビジネスフォンは比較的小規模な環境に向いています。
接続可能な電話機の台数が異なるため、中小企業であればビジネスフォン、コールセンターや大企業であればPBXを選択することが多いでしょう。
また導入費用も大きく異なり、一般的にPBXは高価である一方、ビジネスフォンは安価である傾向にあります。
一方で、導入コストが安価である「クラウドPBX」と呼ばれるサービスも存在します。
PBXの良い点を踏襲しながらも、安いコストで導入できるサービスであり、多くのユーザーに利用されています。
実際、一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会が発行した「通信機器中期需要予測[2018-2023年度]」によると、PBXは2023年には2017年の19%減である国内金額が570億円になると予想されています。
このことから、クラウドPBXの需要が高まっていくことが予想できます。
クラウドPBXのより詳しい仕組みについては、以下の記事でも詳しく解説をしています。
関連記事:クラウドPBXとは?メリット・デメリットと選び方のポイントをわかりやすく解説
PBXは、使用する機器や回線により大きく3種類に分けられます。それぞれメリットとデメリットがあるため、どれを選んでも良いというわけではありません。
それぞれの違いを簡単に表にまとめると以下のようになります。
特徴 | レガシーPBX | IP-PBX | クラウドPBX |
---|---|---|---|
システム | アナログまたはデジタル信号を使用。物理的な配線と交換機構が必要。 | インターネットプロトコル(IP)を使用してデータネットワーク上で通信。 | インターネットを介して提供されるPBXサービス。サーバーとインフラはクラウド上に存在。 |
設備の必要性 | 専用の交換機と内線設備が必要。 | 物理的なPBX機器が必要。 | インターネット接続と対応する端末があれば良い。 |
コスト | 初期設置費用が高く、メンテナンスにもコストがかかる。 | レガシーPBXに比べ初期費用は低いが、機器投資は必要。 | 初期設置費用が低く、運用コストも比較的低い。 |
拡張性 | 拡張には物理的な作業が必要。 | 比較的容易に拡張可能。ネットワークを通じて柔軟な設定が可能。 | 非常に高い拡張性と柔軟性。追加のハードウェアなしでサービスを拡張できる。 |
機能性 | 基本的な電話機能に限られることが多い。 | 高度な通話機能、統合通信機能が可能。 | 最新の通話機能、統合通信サービス、アプリ統合などが可能。 |
まずは、自社に合ったPBXの種類を確認してみてください。
レガシーPBXは、最も歴史の古いシステムです。現在のPBXのなかでは電話線のみを利用するため、接続はアナログ方式となります。
電話回線を利用するため通話が高音質であり、インターネット回線を使用しないためハッキングなどサイバー攻撃のリスクが低いというメリットがあります。
また、停電やサーバーダウンなどの影響をほとんど受けないため、安定した運用が可能です。
ただし、電話回線を使用するため工事には専門資格を持った者が行なう必要があり、専門業者でなければ設置できません。さらに、オフィスの引越しや配置換えなどを行なうと、その都度専門業者に設定を依頼する必要があります。
すでに建物内に電話線が引かれていれば、外部から建物内へ電話線を引くような工事は必要ないため、費用を抑えることもできます。それでもまだレガシーPBXの導入費用は高額であり、気軽に導入できるものではありません。
IP-PBXは、インターネット回線を利用するPBXで、2つの種類に分かれています。
まず、ハードウェア型は、オフィスのなかに専用の主装置を設置する必要があります。インターネット回線を利用するものの、装置をはじめとしたネットワーク全体を自社で管理するため、稼働の安定性や高いセキュリティが確保できます。
また、設置が比較的短時間で済む部分も特徴でしょう。ただし、主装置を設置する必要があるため、オフィスの引越しや配置換えは少し面倒に感じるかもしれません。
次に、ソフトウェア型は主装置を設置する必要はなく、PBX機能を持つソフトウェアを自社サーバーにインストールします。物理的な主装置は不要なため、オフィスの引越しや配置換えにも柔軟に対応可能です。さらに費用も安く抑えられることから、コストを削減したい場合にはおすすめのPBXです。
ただし、どちらもLANが整備されていることが前提です。整備されていない場合にはコストが高くなり、あまりメリットを感じないかもしれません。また、ソフトウェア型はハードウェア型よりセキュリティ面で劣るため、対策が必須です。
クラウドPBXは名称のとおりインターネットクラウドを利用するため、主装置やサーバーを必要としません。インターネット環境さえあれば設置可能なのが大きな特徴です。
クラウドPBXは、レガシーPBXやIP-PBXと大きく異なる点があります。
まず初期費用ですが、先述したPBXを導入する場合、初期費用だけで数百万円かかることも珍しくありません。一方クラウドPBXであれば、初期費用はほとんどかからず手軽に導入することができます。
ただし、月額の費用には注意しましょう。クラウドPBXの場合、月額料金は数千円〜数万円ほどですが、利用する台数や人数によって変化します。
クラウドPBXの利用にかかる料金については以下の記事で詳しく解説をしています。
関連記事:クラウドPBXの利用にかかる料金はいくら?コスパ重視で選ぶ方法を解説
それでも費用としてはPBXのなかでは相対的に安く、導入がしやすいのが大きなメリットです。また、主装置の設置や工事も必要なく、管理やサポートも運営するベンダーに任せられます。
次に接続できる機器の多さです。インターネット経由でクラウドPBXを利用するため別のオフィスの電話だけではなく、スマートフォンやタブレット、パソコンにも接続できます。
つまり、固定電話の子機を増やす必要はなく、社用のスマートフォンなどで内線や外線に対応可能ということです。初期費用とランニングコスト、使いやすさにも優れたPBXといえるでしょう。
PBXの導入にあたり、具体的にどのような機能を備えているのか理解しにくいかもしれません。そこで、PBXを効率的に利用するための主要な機能を4つ紹介します。
まずは発着信の制御です。契約している代表の外線電話番号と子機の電話番号を紐付けして発着信ができます。
少し複雑な仕組みですが、部署ごとに発着信を振り分けたい場合に便利な機能です。
例えば、事務で電話を受けてから営業部に回すといった方法ではなく、直通で営業へつながるような形をイメージしてみてください。営業部に専用の電話番号を割り当てれば、直接営業部に着信させることができます。
発信するときには、子機から代表番号として外部に電話をかけることができます。
「内線同士での通話」と聞くと、当然の機能であるように感じるかもしれません。
しかし、PBXの場合は一般的に想像する内線とは少し異なり、オフィス内での内線通話はもちろんのこと、拠点間を専用線やインターネットで接続していればオフィスが離れていても無料で通話が可能です。
スマートフォンに対応したPBXであれば、オフィスとスマートフォンの間の通話でもオフィス内と同様に内線を利用できるため、通話料金を大きく下げられます。
最近はスマートフォンを利用した内線機能が広がりつつあり、PBXを導入するのであれば必須の機能といえるでしょう。
取引先などから着信があった場合、別部署やフロアにいるほかの従業員の電話機へ転送することが可能です。
また、転送機能にはいくつかの種類があります。
あくまで代表的なものだけを挙げていますが、上記のような転送機能を利用可能です。
不在転送は、誰も電話に出られなかったときにあらかじめ指定した電話番号へ転送する機能です。事前の設定が必要ですが、席を外すことが多い場合には便利に使えるでしょう。
応答遅延転送も似たような機能ですが、設定した回数以上の呼び出しがあっても応答がない場合に別の電話番号へ転送します。
最後に着信選択転送ですが、特定の着信に対して事前に指定した電話番号に転送する機能です。このほかにもPBXの転送機能は豊富で、転送機能について知るほどより便利に利用できます。
通常の保留機能は、内線を使って担当者に電話を取り次ぎします。パーク保留機能も似た機能ですが、誰に転送して良いかわからない場合に利用します。
パーク保留にすることでPBXに接続されたすべての電話機が保留状態となり、どの電話機からでも対応可能です。
保留中に用件をアナウンスするなどして、対応できそうな人を探してから電話に出てもらい対応してもらうことになります。
それほど汎用性は高くありませんが、場面によっては便利な機能です。
ここまでPBXについて解説してきましたが、種類や提供しているベンダー、サービスなどで悩むかもしれません。そこで、ここでは自社にあったPBXの選び方について解説します。
PBXの導入には費用が発生しますが、特にレガシーPBXとIP-PBXに関しては数百万円もの初期費用が必要な場合があります。
余裕があればどのPBXでも選択できますが、初期費用を抑えたいのであればクラウドPBX一択になるでしょう。
クラウドPBXであれば、初期費用はほとんどかかりません。月額の費用は発生しますが、多くのサービスではサポート費用も月額料金に含まれており、十分なサポートが得られます。
もし、初期費用にこだわらないのであれば、自社に必要な機能がすべて提供可能なサービスを選んでみてください。
オフィスをすっきりとさせたい、配置換えが多いなどの理由で選ぶのであれば追加で電話線の配線が不要なクラウドPBXをおすすめします。クラウドPBXはインターネット上のクラウドを利用したPBXです。
そのため、オフィスの移転や配置換えが生じても配線を引き直す必要がありません。
反対に、すでに電話線が引かれているオフィスを使用するのであれば、レガシーPBXかIP-PBXが向いているでしょう。例えばコールセンターなど、通話の品質にこだわるのであれば、電話回線を利用した方がよいでしょう。
なかでもレガシーPBXは最も歴史の長いPBXであり、主装置をオフィスに設置して電話回線を利用することから高音質の通話を可能にしています。ただし、仕組みが複雑で設置には資格が必要なため、専門の業者にしか依頼できません。
最後にセキュリティです。電話にセキュリティは関係ないように感じるかもしれませんが、インターネット回線を利用するPBXもあります。
そのため、コンピューターウイルスへの感染やそれによる情報漏洩の可能性についても十分に考えておきましょう。
安全性が最も高いのは、インターネット回線を利用しないレガシーPBXです。さらにインターネット上のサーバーダウンなどによる影響も受けません。
次に安全なのがIP-PBXのハードウェア型です。主装置の設定によっては高いセキュリティレベルが期待できます。
IP-PBXのソフトウェア型とクラウドPBXに関しては、インターネット回線を経由してOS上のソフトウェアやインターネットクラウド上のデータを使用することから、安全性が高いとはいえません。
しかし、しっかりとセキュリティ対策を施したうえで信頼できるベンダーのサービスを選択すれば、そこまで気にする部分ではないでしょう。
サポート面などもしっかりと確認し、併せてセキュリティに関しても問い合わせてからの契約をおすすめします。
PBXの仕組みや種類、選び方などを解説しました。PBXは便利なシステムではありますが、種類や機能などが豊富なため複雑になりがちです。
まずは、今回の記事でPBXについての理解を深め、自社に合ったシステムとベンダーを選択してみてはいかがでしょうか。
クラウドPBXに特化したSPICA(スピカ)では、オフィスに限らず自宅や外出時でも会社の電話番号が利用できます。導入に関する相談は無料で受け付けているため、ぜひ一度ご相談ください。
クラウドPBX SPICA(スピカ)公式サイトはこちら